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令和2年10月29日(木)
冒険の始まりは学校の図書室
 今給黎教子(いまきいれきょうこ)さんを知っていますか?1988年,ヨットで日本人女性として初めて太平洋単独往復に成功した鹿児島の冒険家です。1991年,オーストラリアから日本までの太平洋縦断レースにおいて準優勝しました。同年10月,日本人初,東回りでたった一人で世界一周に挑戦するため,ヨットで鹿児島を出航し,翌1992年7月に無事帰還し,世界1周に成功した方です。
 そんな今給黎さんが中学生の頃,偶然学校の図書室で,ロビン・リー・グレアムの航海記『ダブ号の冒険』を見つけました。その本は,ヨットでの実話の航海記です。今給黎さんはその本を読み,ヨットに猛烈な関心をもつようになりました。当時今給黎さんが通っていた中学校は海から離れていました。それまでヨットを見たことがなかった今給黎さんは,自宅から遠く離れた平川ヨットハーバーというヨットの停泊所に自転車で通い始め,ヨットを眺めるようになりました。その後,憧れを実現させるべく,1980年ヨット部がある県立高校に入学しヨット部に入部しました。翌年1981年から1987年にかけて,国民体育大会のヨット競技に7年連続出場し高校総体では3位入賞を果たしています。高校卒業後は,ヨット部がある鹿児島市役所に就職しましたが,更なる冒険にチャレンジするため市役所を退職し,冒頭紹介した活躍をされました。
 今給黎さんが初めてヨットのことを知ったのは,中学生の頃,通っていた中学校の図書室で航海記『ダブ号の冒険』を読んだからです。図書室で読んだ本が,彼女の人生を変え冒険家としての歩みを決定づけました。
 志布志中学校の生徒の皆さんも,是非,学校の図書館や市立図書館を利用してください。人生を変える,生き方を変える本と出会えるかも知れませんよ。
 ちなみに,1995年に再出版された航海記『ダブ号の冒険』の最後には,今給黎さんの解説があります。今給黎さんがこの本を読んで,ヨットでの世界一周を夢見た理由も書かれています。自分が読んで感動した本の解説を書くなんて,本との出会いは本当に不思議ですね。

令和2年10月27日(火)
読書週間
 10月27日から11月9日までの2週間にわたり「読書週間」が設定されています。読書週間では,読書を推進する行事が集中して行われます。
 1924年に日本図書館協会が11月17日から11月23日までの「図書週間」を制定していました。1933年には「図書館週間」と改称され,出版界では「図書祭」が開催されていました。しかし第2次世界大戦の影響で,1939年には一旦廃止されました。
 終戦後の1947年,まだ戦火の傷痕が至るところに残っているなかで「読書の力によって,平和な文化国家を作ろう」という決意のもと,日本出版協会,日本図書館協会,取次・書店の流通組織,その他報道機関や文化関連団体など30あまりが参加し「読書週間実行委員会」が結成され,11月17日から11月23日までの第1回「読書週間」が開催されました。そのときの反響はすばらしく,翌年の第2回からは期間も10月27日~11月9日(文化の日を中心にした2週間)と定められ,この運動は全国に拡がっていき,現在に続いています。今,電子メディアの発達によって,世界の情報伝達の流れは,大きく変容しています。しかし,その使い手が人間である限り,その本体の人間性を育て,かたちづくるのに,「本」が重要な役割を果たすことは変わりありません。私たちの日常の暮らしの中に,読書を取り入れていきましょう。
 『読書週間』が始まる10月27日が,「文字・活字文化の日」に制定されました。志布志中学校の生徒の読書に対する熱意の盛りあがりを期待しています。
 さて,2020・第74回読書週間の標語は,「ラストページまで駆け抜けて」です。1冊の本を一気に読むのは時間的に難しいかも知れません。が,継続的に読書し最後のページまで読破して,自らの人生の羅針盤とする本を見つけてください。

令和2年10月26日(月)
一寸(いっすん)の光陰(こういん)軽(かろ)んずべからず
 光陰の「光(こう)」は光(ひかり)と書き,日のことです。「陰(いん)」は陰(かげ)と書き,月のことです。つまり,光陰とは月日,歳月のことです。直訳すると,一寸,少しの時間であっても軽く見てはいけないし,大事にしなければならない,という意味です。
 これは,中国・宋時代の儒学者であった朱熹(しゅき:朱子(しゅし))の「偶成(ぐうせい)」という漢詩だとされていました。しかし,朱熹の作品中にはこの詩の言葉は見当たらず,近年,室町時代の日本の禅僧(ぜんそう)の詩の言葉だと判明しました。
 少年老い易く学成り難し
 一寸の光陰軽んずべからず
 未(いま)だ覚(さ)めず池塘春草(ちとうしゅんそう)の夢
 階前(かいぜん)の梧葉(ごよう)已(すで)に秋声(しゅうせい)
 これは,「若者はすぐ年をとり,学問はなかなか成就(じょうじゅ)しない。まだ早い春だと思って眠りから覚めずにいるうちに,あっという間に周囲には秋の色がただようように,人生は早く時間が過ぎていく。だから,一刻も無駄にせずに学に励むべきである」という意味です。
 私も,ついこの間まで中学生だったような気がしますが,気が付けば,あっという間にこれまで生きてきた年月よりも残りの年月の方が少ないという年齢になりました。人生の折り返し点はとっくに過ぎており,「あっ」という間でした。
 志布志中学校の生徒の皆さん,時は待ってはくれません。今この瞬間を大切にしましょう。1分あれば英単語や漢字が何個も覚えられます。5分あれば,数学の文章問題の1題も解けます。こうした短い時間でも,使い方によってはその積み重ねは大きな差になります。年をとってから後悔することのないように,将来の自分に感謝されるよう,「一寸の光陰を軽ぶことなく」過ごしましょう。