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『盗むという学習法』

令和2年7月13日(月)
盗むという学習法
授業を普通に受けているからといって,生徒の皆さん全員がすぐに成績が上がるわけではありません。先生方がどんなに手を尽くしても,生徒の皆さんが,自分を伸ばそう向上させようという意欲と自覚がなければ,あまり効果が上がりません。先生方の思いと皆さんの意欲と自覚とが一致して,初めて成績が向上していきます。
教育とは,教える・教わるということだけで行われるものではありません。例えばプロ野球やプロサッカーの世界では,先輩が後輩を教えるというようなことはほとんどありません。後輩といえども強力なライバルなのです。自分の持っている技術を教えて,後輩の方が上手くなってしまったら,先輩は自分のポジションを失い,チームを離れることになりかねません。ですから,プロの世界では,先輩は後輩に教えたがらないのです。そこで,後輩は先輩のプレーを見て,自分の力でそこから何かを学びます。これを「盗む」といいます。
歌舞伎(かぶき)の世界では,「芸は一代」といいます。芸名(げいめい)を世襲(せしゅう)しても,芸風(げいふう)までは受け継ぐことはできません。また,料理人の世界でも,先輩は後輩に見て学べと言い,最初は皿洗いや食材の下ごしらえだけさせ,直接先輩が後輩に教えることは少ないものです。つまり,芸事や調理の技術なども教わるものではなく,「盗む」ものなのです。「盗む」とは,教育される側,つまり学ぶ側の積極性の問題です。生徒の皆さんは,学習や部活動などの技術の習得に関しては,受け身の姿勢では無く,「盗む」ような積極的な姿勢で学び取っていきましょう。
 しかし,実際に誰かの物を自分のものにしてしまう,誰かの物を盗む行為は窃盗罪(せっとうざい)という犯罪です。刑法上,窃盗罪は財産罪の一種であり,強盗罪(ごうとうざい)や詐欺罪(さぎざい)・恐喝罪(きょうかつざい)などと同様の領得罪(りょうとくざい)です。万引きなどの誰かの物を盗む行為は,絶対にしてはなりません。