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人事を尽くして天命を待つ

令和4年2月4日(金)
人事(じんじ)を尽くして天命を待つ
中国の「読史管見(とくしかんけん)」という書物が出典の故事(こじ)成語(せいご)です。この本の中で胡寅(こいん)は,名臣(めいしん)の謝安(しゃあん)が淝水(ひすい)の戦いに勝った時の心境を「人事を尽くして天命に聴(まか)す」=「全てをやり切ったのだからあとは天命に任す(まかす)」と表現しています。
物事がうまくいくかどうかは,正直誰にも知りえないこと。「人事を尽くして天命を待つ」はそのような結果を気にするのではなく,ひたすら努力を尽くし,悔いのない心境(しんきょう)に達することを示しています。
松下幸之助は,次のように述べています。
「『人事を尽くして天命を待つ』ということばがある。まことに味わい深いことばである。私心(ししん)にとらわれることなく,人としてなしうるかぎりの力をつくして,そのうえで,静かに起こってくる事態を待つ。それは期待どおりのことであるかもしれないし,期待にそむくことであるかもしれない。しかしいずれにしても,それはわが力を越えたものであり,人事をつくしたかぎりにおいては,うろたえず,あわてず,心静かにその事態を迎えねばならない。そのなかからまた次の新しい道がひらけてくるであろう」
できうる限りの手を打ち,力を尽くしたのに,結局運次第というのではやりがいがない,頑張ったかいがないと思うかもしれません。しかし一方で,“ここまでよくやった”と自分自身を認めることができれば,“あとは野となれ山となれ,天の決めることだ”と気楽に構えられるようになります。天の定めることで自分には責任がないのですから,心軽やかに過ごせると言えるでしょう。もちろん,よきにつけ悪しき(あしき)につけ何らかの結果が出ればそれには適切に対処しなければなりません。しかし,それは事後のことです。いま気にかけることではないでしょう。真に人事を尽くして天命を待つ心境になれば,おおらかに心軽やかに歩んでいくことができるのではないでしょうか。