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勤勉の徳

令和3年12月20日(月)
勤勉の徳(松下幸之助)
 天災(てんさい)地変(ちへん)をまつまでもなく,粒々辛苦(りゅうりゅうしんく)の,すなわち農民が苦労してつくった穀物(こくもつ)の一粒一粒の結晶による巨万の富も,事あらば一朝にして失われてしまうことがしばしばある。形あるものはいつかは滅びるにしても,まことにはかない姿であるといえよう。だがしかし,身についた技とか習性とかは,これは生あるかぎり失われはしない。たよりになるのは,やはり自分の身についた技,身についた習性。だから,何か一つでもいいから,よき技,よき習性を身につけたいものであるが,なかでもいわゆる勤勉(きんべん)の習性は,何にもまして尊いものに思われる。
 勤勉は喜びを生み,信用を生み,そして富を生む。人間のいわば一つの大事な徳である。徳であるかぎり,これを積むには不断(ふだん)の努力がいる。相撲(すもう)に強くなるためには,不断(ふだん)に(絶えることなく)真剣なけいこを積まねばならないように,勤勉の習性を身につけるためには,まず日々を勤勉につとめる努力がいるのである。その努力が重なって勤勉の習性が身につき,その習性からはじめて徳が生まれてくる。おたがいに勤勉の徳を積みたいものである。