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「この気持ち分かる」は読書から

令和3年10月28日(木)
「この気持ち分かる」は読書から
 小説「火花」で芥川賞(あくたがわしょう)を獲得(かくとく)したピースの又吉(またよし)直樹(なおき)さんは,中学生の頃から太宰(だざい)治(おさむ)や芥川(あくたがわ)龍之介(りゅうのすけ)をよく読んでいたといいます。
「夜を乗り越える」という本の中で,又吉さんは太宰治の「人間失格」を読んだときのことを,こんな風に語っています。
「この主人公,めっちゃ頭の中でしゃべっている。俺と一緒ぐらいしゃべっている」
 自分の気持ちは誰にも分かってもらえません,こんな風に悩んでいるのは自分だけなんだろうな,と思っていたときに太宰治の「人間失格」と出会って,自分と同じように悩んだり考えたりしている人がいるんだ,と知ったわけです。
「ああ,この感覚,自分にもある」「わかる,わかる」と思える。共感できる。本と対話するということは,そういうことです。
「本に出会い,近代文学に出会い,自分と同じ悩みを持つ人間がいることを知りました。それは本当に大きなことでした。本を読むこと,本と話すことによって,僕はようやく他人と,そして自分との付き合い方を知っていったような気がします」
と又吉さんは書いています。
 人間関係がうまくいかないとか,自分はこれでいいんだろうかと悩みを抱えているとき,つながっている人たちがいるのはとても心強いものです。
 悩みが解消されるわけではなくても,気持ちをやわらげることができます。
「自分は一人じゃない」と思えるようになった本は,皆さんの生涯の友達になることでしょう。