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「“serendipity”セレンディピティ」の例「カッター」

令和3年2月15日(月)
「“serendipity”セレンディピティ」の例「カッター」
 カッターが開発されたのは1956年の日本です。当時は紙を切る作業は,カミソリで行っていました。そして,カミソリの刃が切れなくなるとすぐに捨てていました。
 カッターの発明者である岡田良男(よしお)は昭和6年4月に,大阪市内で四男一女の長男として生まれました。家業は,印刷用紙を断裁する工場でした。幼い頃から工作が好きで,ナイフ・ハサミをよく使いました。昭和19年良男が10歳の時,空襲で家も工場も失い,一家は南紀(なんき)の白浜(しらはま)に疎開(そかい)しました。
 良男は家計を助けるため,中学を中退し働きに出ました。最初の仕事は電気の見習い工でした。その時の電気の仕事で,いろんな道具を使った経験が後のカッターづくりに役立ちました。その後いくつかの仕事を経て,良男はある印刷会社に就職しました。
 印刷の仕事には,紙を切ることが多かったそうです。職人たちはカミソリの刃をつまんで切っていましたが,危いし刃の両端しか使えず,切れなくなるとすぐ捨てていました。
 良男はこの様子を見て「もったいない。何とかできないだろうか」と考えました。その時ふと,板チョコがパキパキと折れる様子が頭に浮かびました。そこから,板チョコのように刃に切れ込みを入れておいて,簡単に刃が折れるようにすれば1枚の刃で何回も新しい刃が使えるとひらめきました。これは「セレンディピティ」です。
 仕事が終わってから,印刷工場の片隅で夜遅くまで試作品を創り続けました。試行錯誤の末に設定した刃の規格は,互換性の関係で世界基準となり,特許も取得しました。しかし,資金も経験もありません。大手メーカーに製造をお願いしましたが,どこも相手にしてくれません。
 良男は「仕方ない,自分たちで作ろう。」と自作を始めました。初めて他の工場に注文した3000本は,仕上がりはバラバラ,刃の入らないものや外れるものばかり。良男は3ヶ月かけ,ペンチなどの工具を手に一本・一本手直しをして商品にしました。それが,折る刃式カッターナイフの誕生でした。ちなみに,折る刃式カッターを開発した良男の会社は,ずばり「オルファ」という社名です。