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「人身(じんしん)受け難(がた)し,今已(すで)に受く」

令和3年1月20日(水)
「人身(じんしん)受け難(がた)し,今已(すで)に受く」
 これは,お釈迦様の有名な言葉です。人身とは私たち人間のことです。「なかなか生まれることが難しい人間として生まれることができてよかった!」という意味です。
 私たちは人間に生まれたことを当たり前のことと思ったり,苦しい時や悲しい時などは,人間に生まれたことを恨んだり後悔したりしていませんか?しかし,人間に生まれたことは,とても有り難いことなのです。これには,次のような話があります。
 ある時,お釈迦様が弟子の阿難(あなん)に,
「あなたは人間として生まれたことをどう思っていますか」と尋ねられました。阿難(あなん)は
「大変喜んでおります」と答えると,お釈迦様は盲亀浮木 (もうきふぼく)の譬(たと)え」と言われるお話をしました。
「果てしなく広がる海の底に,目の見えない亀がいる。その亀が,100年に一度,海面に顔を出すそうだ。広い海には一本の丸太棒が浮いている。丸太棒の真ん中には小さな穴がある。その丸太棒は風や海流に乗って,西へ東へ,南へ北へと漂っているのだ。」
「阿難(あなん)よ,100年に一度,浮かび上がるこの亀が,浮かび上がった拍子に,丸太棒の穴にひょいと頭を入れることがあると思うか?」と聞かれた阿難(あなん)は驚き,
「お釈迦様,そんなことはとても考えられません!」と答えると,
「絶対にないと言い切れるか?」お釈迦様が念を押されると,
「何億年かける何億年,何兆年かける何兆年の間には,ひょっと頭を入れることがあるかもしれませんが,無いと言ってもよいくらい難しいことです」と阿難(あなん)が答えました。お釈迦様は,
「ところが阿難(あなん)よ,私たちが人間に生まれることは,この亀が,丸太棒の穴に首を入れることがあるよりも,難しい,有難いことなんだよ・・・」と話されました。
 「有難い」とは「有ることが難しい」ということで,めったに無いことです。人間に生まれることは,それほどめったにないことで,喜ばねばならない奇跡のようなことなのです。
 「人身受け難し,今已に受く」とは,「人間に生まれてよかった!」と思える奇跡への感謝の気持ちを込めたの言葉なのです。