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『絶望からの奇跡の復活』

令和2年10月9日(金)
絶望からの奇跡の復活
 2013年,埼玉県坂戸(さかど)市で,野球部の練習後に帰宅途中の高校生が,男子大学生が運転する車にひかれ大けがをするという事故に逢いました。午後6時半頃,淑徳(しゅくとく)大学のグラウンドに併設(へいせつ)された駐車場で,野球部の練習を終えて帰宅しようとしていた淑徳高校野球部の2年の男子生徒が車にひかれたのです。車はそのまま壁に衝突して止まりました。男子生徒は両足を切断する大けがをしました。車を運転していた野球部OBで19歳の男子大学生は警察に自動車運転過失傷害の疑いで逮捕されています。男子大学生は後輩の練習を見に来ていて,取り調べに対して「後輩に気づいたがブレーキが間に合わなかった」と言っていました。
 それから6年後。
 2019年7月23日に開幕した第90回記念選抜高校野球大会を,特別な思いで見つめる元高校球児がいました。明治大学3年の森宏明さんです。森さんは甲子園を目指していた17歳の時,事故で両脚を切断したあの元高校球児です。
 森さんは事故から5年後の2018年からパラノルディックスキーを始め,2022年・北京冬季パラリンピックを目指しています。新たな目標に挑む自分と,球児を重ね合わせ「大舞台を楽しみながら,自分ができる最大限のプレーをしてほしい」と期待を込めています。
 野球が好きだった高校球児が,突然両足を失うという悲劇に遭遇しました。森さんはそのときからどのような人生を歩んだのは知る由(よし)もありませんが,2年後の冬季パラリンピック出場を目指すスキー選手となって表舞台に出てきました。まさに奇跡の復活と言えるでしょう。