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無欲は怠惰の基である。

令和3年6月16日(水)
無欲(むよく)は怠惰(たいだ)の基(もと)である。/渋沢栄一(しぶさわえいいち)
2024年度に一新される新1万円札に採用される人物は,渋沢栄一です。2021年大河ドラマ『青天を衝け(せいてんをつけ)』の主人公でもあります。
民間の力が弱かった時代に「もっと社会を良いものにしたい」という一心で,現みずほ銀行をはじめ数多くの企業を設立しました。その功績から,日本資本主義の父と称されています。しかし,渋沢栄一は,順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の人生だったわけではありません。大きな時代の変化によって,何度となくキャリアの変更を余儀(よぎ)なくされ,四度目の正直でようやく自分が求めていることにたどり着くことができました。
最初の挫折(ざせつ)は,もともとは尊王(そんのう)攘夷(じょうい)派の志士(しし)だったのに,若気(わかげ)の至り(いたり)のクーデターに失敗して徳川慶喜(よしのぶ)に仕えることになったことです。
次に,徳川慶喜(よしのぶ)に仕える第二のキャリアがスタートしたと思ったら,大政(たいせい)奉還(ほうかん)でそこから先が望めなくなりました。
そして,明治政府で第三のキャリアがスタートし大蔵省のナンバー2まで上り(のぼり)詰め(つめ)ましたが,トップとぶつかって大蔵省を辞めてしまいました。
特別に能力が高いからとか,恵まれた環境にあったからとか,いろいろな意見はあると思いますが,渋沢栄一が度重なる(たびかさなる)挫折にもかかわらず,生涯をかけて500社もの会社を立ち上げ,日本の経済力を高めることに貢献できたのは,未来を信じることができたからです。そして,それとともに自分の夢をあきらめなかったからだと思います。
この「無欲(むよく)は怠惰(たいだ)の基(もと)である」ということばには「欲が無いのは,今の現状に何の課題を見出さず,ただ受け入れている状態だ」という思いが込められています。渋沢栄一が求めている欲は,世の中をもっと良いものにしたいという,より良い社会の実現に対する社会的欲求です。渋沢栄一は,それを率先垂範(そっせんすいはん)しました。官尊民卑(かんそんみんぴ)の傾向が強かった世の中で,民間の力をより強いものにするため,これからの日本の成長に必要な会社を次々に立ち上げていき,日本の近代化に大きく貢献しました。