令和3年11月24日(水)
「自分の感受性(かんじゅせい)くらい」
今日は,茨木(いばらぎ)のり子さんの「自分の感受性くらい」の詩を紹介します。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つ(いらだつ)のを
近親(きんしん)のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心(しょしん)消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目(だめ)なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳(そんげん)の放棄(ほうき)
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
この『自分の感受性くらい』の詩は,四半世紀(しはんせいき)を共に暮らした夫に先立たれた2年後に出された,茨木(いばらぎ)のり子さんの代表作です。『自分の感受性くらい』の詩は,かつて戦争で生活から芸術や娯楽(ごらく)が消えていった時に,茨木のり子さんが思っていたこと考えていたことを詠い(うたい)あげたものです。