令和3年9月27日(月)
風が吹けば(松下幸之助)
風が吹けば波が立つ。波が立てば船も揺れ(ゆれ)る。揺れるよりも揺れないほうがよいけれど,風が強く波が大きければ何万トンの船でも,ちょっと揺れないわけにはいくまい。これをしいて止めようとすれば,かえってムリを生じる。ムリを通せば船がこわれる。揺れねばならぬときには揺れてもよかろう。これも一つの考え方。
大切なことは,うろたえないことである。あわてないことである。うろたえては,かえって針路を誤る。そして,沈めなくてよい船でも沈めてしまう結果になりかねない。すべての人が冷静にそして忠実にそれぞれの職務(しょくむ)を果たせばよい。ここに全員の力強い協力が生まれてくるのである。
嵐のときほど,協力が尊ばれるときはない。うろたえては,この協力がこわされる。だから,揺れることを恐れるよりも協力がこわされることを恐れたほうがいい。
人生は運不運の背中合わせといえる。いつ突如(とつじょ)として嵐がおとずれるかだれしも予期することはできない。
つねに自分のまわりを冷静にながめ,それぞれの心がまえをしっかり確かめておきたいものである。